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インターネットで自宅で読める、図書館員おすすめの本(青少年向け)
本はそれを書いた人の権利を守るために、一定期間は著作者の許諾を得なければ自由に利用することができません。
ここでは、スマートフォンや自宅のパソコンで自由に読める本の中から、おすすめの本をいくつか紹介します。
時代を経た作品が多いですから、場合によっては現代の価値観やモラルに照らすと問題にされ得る表現があります。その点は御了承ください。
※著者等名をクリックすると著者等の他の作品を読むことができます。
著者等名及びタイトル | 本の紹介文 | 提供サイト名 | |
1 | 江戸川乱歩/著 『赤い部屋』 | 乱歩のサービス精神が凝縮した最高のエンターテイメント小説です。 「赤い部屋」に集まったメンバーは、本日の語り手であるT氏の奇妙な物語に耳を傾けます。T氏が語りだしたのは人殺しの話、しかも実際にT氏が行った、犯罪の立証が難しい「未必の故意」による殺人の数々です。99人もの人間を殺めてきたというT氏、そして100人目の犠牲者が…。 最後にまで仕掛けが施された巧みなストーリー展開がもたらす痛快な読後感。読者の幻想を相対化するようにふっと消え去る赤い部屋。物語に没頭することと騙されることの楽しさを教えてくれる短編です。 | 青空文庫 |
2 | アントン・チェーホフ/著 神西清/訳 『イオーヌィチ』 | 想い続けた女性にこっぴどく振られてしまってから、純粋さをなくした人生を歩む悲しい男の話。 医師のスタルーツェフは、社交的だけれどもやけに気取ったトゥルーキン一家に招かれるうちに、娘のエカテリーナに惹かれていきます。エカテリーナに言い寄ったスタルーツェフを、彼女は真夜中の墓地に呼び出します。愛しい人を待ちながら、月の光に照らされた墓地を見渡すスタルーツェフの心情描写が圧巻です。 冷めた心で現実と向き合って傷つかないように生きていくスタイルも時には必要ですが、感動のない人生は悲しい。洒脱で軽妙だけれども、涙を誘う不思議な小説です。 | 青空文庫 |
3 | 石川博品/著 『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』 | 日本には数多く、戦闘・戦士アニメの名作があります。この作品は映像ではなく、文字だけで戦闘シーンを描きあげた見事な戦闘・戦士小説です。しかし、主人公の高校生“上原蒼(うえはらそう)”が、一緒に戦い、行動を共にする中、ハルカという高校生に心を寄せる恋愛小説でもあります。作者独特の繊細な描写が、心に流れ込んで落ちていく一冊です。特殊能力を持った若者たちが未知の生物に挑む姿は、あなたの心をどう動かすでしょうか。 本の世界に入るには、無限大の想像力が、必需品で、武器でもあります。そんな能力を持ったあなたは、ぜひこの世界に飛び込んでみてください。 | カクヨム |
4 | 浅原ナオト/ドラゴンブック編集部/著 『御徒町カグヤナイツ』 | カッコいいものが大好きな14歳の中学生、つまりは無敵の4人組。 少々「アウトロー」なヒロト、ケイゴ、ソン、カトウの4人は「月の姫」ノゾミの下に騎士団を結成しました。ノゾミは自称「月の民の王女」にして、難病「月帰還性症候群(自称)」をわずらい、大学病院に入院中。 彼女を月に帰しはしない! ザ・ブルーハーツの楽曲をBGMに彼らの冒険が走り出します。 「僕はすぐさま、みんなで決めた最終決戦用装備の学ランに着替える。学校なんて好きじゃない。だけど僕たちが一番強くなれる格好は、間違いなくこれだ。」 | カクヨム |
5 | アーサー・コナン・ドイル/著 三上於莵吉/訳 『黄色な顔』 | 『シャーロック・ホームズの思い出』に収録されている、珍しくホームズが推理を外してしまうお話。今度のホームズの依頼人は、奥さんの不審な行動を心配する男性です。 隣家に引っ越してきた謎の人。死者のような「青ざめた黄色」の顔をしたその人物のもとへ、奥さんは夫に隠れて会いに行っているようです。黄色な顔の正体とは? 今回の事件の解決は、ホームズによる謎の解明でなく、依頼人の行動によってもたらされます。ホームズよりも依頼人がめちゃくちゃかっこいい、心に残るエピソードです。 | 青空文庫 |
6 | 中勘助/著 『銀の匙』 | 学校に行きたくない、会社に行きたくない、誰にだってそういう後ろ向きな気持ちになることがあります。そんな時、倒れそうな自分を支えてくれるのは、子供のころに周りの人から大切にされたというあたたかな想い出ではないでしょうか。 体の弱い「私」をずっとおんぶしてくれていた伯母さん、初めての友達お国さん、勝気な女の子お惠ちゃん、えらそうに教育してくるお兄さん、友人の美しいお姉様。やさしい人たちとの出会いと別れの美しい記憶が、銀の匙となって今の「私」をも護ってくれているのです。あなたにもそんな銀の匙があるはずです。 | 青空文庫 |
7 | 海野十三/著 『空気男』 | 透明になれる方法を発見した清家博士の悲劇をユーモラスに描く短編SF。 恐妻家の清家博士は、マス子夫人から逃げるため消身電気を見に纏い、失踪を試みます。上手くいったかに見えましたが、雨に濡れて姿が現れたところを奥さんに捕まってしまいます。再び逃れようと今度は消身薬を飲みますが、この薬には欠点があり、透明になった体が空気みたいにフワフワと浮かんでしまうのです。風に飛ばされて街を漂う清家博士の運命やいかに。 最終章は「大団円」というタイトルですが、ちっとも大団円してません。読後、なんとなくシャガールの絵を思い浮かべてしまうのは私だけ?? | 青空文庫 |
8 | 望月くらげ/著 『この世界で、君と二度目の恋をする』 | 付き合っていた新からの突然の別れ、そして突然の死。彼の母から渡された日記には彼の初恋の思い出が綴られていましたが、その日記には秘密が隠されていました。読んだ日付に戻ることが出来る。そのことを知った旭は、なぜ突然の別れを新が告げなければいけなかったのか本当の理由を知り過去を変えていくことを決心します。日記のページをめくり日を追うごとに旭は何度も辛い思いをしますが、新を想う気持ちはより一層増していくばかりです。 大切な人を想う気持ちはまっすぐで純粋なものだということを改めて思わせる作品です。 | カクヨム |
9 | 望月くらげ/著 『この空の下で、何度でも君を好きになる』 | 辛い時もいつも支えてくれた大切な人を自分が死んでも守りたい、そう考えたことはありますか。 家族関係に悩みながらも大切な人に支えられて過ごす瑞穂。彼女が一冊のアルバムと出会い、そこに貼られている写真を見ることによって、苦悩の毎日が始まります。 周囲の人と最近会話していない、自分の中だけで悩んでしまっている、そんなあなたに読んでほしい一冊です。読み終わった時に、普段口にしなかった感謝や思いを伝えようと、一歩踏み出すきっかけになるかもしれません。 | カクヨム |
10 | 江戸川乱歩/著 『黒手組』 | 探偵明智小五郎が登場する本格推理小説。冒頭から暗号文が示され、犯罪集団黒手組を巡る事件がテンポよく展開されます。後半は解答編になっており、極上の暇つぶしができます。 お金持ちの家ばかり狙い、身代金目当ての誘拐を繰り返す黒手組から「私」の伯父の家が狙われます。身代金受け渡し現場には黒服の男が現れますが、不思議なことに後で調べると男が居たはずのところに足跡が残っていません。 語りかけるような文体が、読者を事件に一気に引き込んでいきます。後味もとても爽やかで、きっとあなたも明智のファンになるはずです。 | 青空文庫 |
11 | 岡本かの子/著 『鮨』 | 食べるという行為が大好きな人は多いでしょう。でも、そうでない人もいます。 鮨屋の娘「ともよ」は、初老の男性客、湊に対して「妙な気がかり」の感情を持つようになります。湊は鮨を味わう間、窓の外の風景をじっと眺めるのです。ともよの淡い想いは、恋なのでしょうか。 ある日、街で偶然出会った二人は、空き地に座って語り合います。そこでともよは湊の幼少時代の記憶に触れ、彼が鮨を食べながら見ていた本当の情景を知ることになります。湊の回想と二人の関係が切ない短編です。 | 青空文庫 |
12 | 合田拍子(グルグル魔)/著 『豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい』 | 大人気アニメ「シューヤ・マリオネット」に登場する嫌われ者の豚公爵、スロウ・デニングに転生してしまった主人公が、アニメ知識や努力で、底辺から成り上がる物語。好きな人に想いを伝え、共にある為に立ちあがる彼の想いの強さ、深さには心を動かされるはず。彼の活躍、ぜひご覧ください。 | カクヨム |
13 | 草野なつめ/著 『哲学研究室の午後』※書籍化にあたり『ミネルヴァの梟は飛び立ちたい〜東雲理子は哲学で謎を解き明かす〜』と改題されています。 | 本作は哲学を専攻する大学院生の東雲理子を主人公に、彼女の周りで起こった8つの事件についての物語です。事件といっても殺人事件や凶悪事件に発展するような出来事ではなく日常のちょっとした不可解な出来事なのですが、それが哲学的考察に落とし込まれていく過程がとても鮮やかです。 巻末の紹介文によると、作者の草野なつめさんは大学で教鞭を取る哲学研究者で、そもそも哲学とは何かを伝えるためというのが執筆動機だそうです。随所で見られる哲学についての知識もわかりやすく、一貫している「考える」ということに対する真摯さとも相まって、作者の意図が十二分に伝わった本になっています。 | カクヨム |
14 | 芥川竜之介/著 『トロッコ』 | 誰もが子どもの頃に感じた、日常のちょっと先にあるスリル。わくわくする気持ちに引き込まれていくようなお話です。 あなたも8歳の良平とトロッコを押しながら、彼の胸の高鳴りを共有し、そして独りぼっちの恐怖と必死に戦うことになるでしょう。彼と歩むトロッコの線路の長さや勾配が、まるで曲線グラフのように、物語を読む私たちの心の中の高揚や不安感を描き出します。 明日にでも孤独は急にやってきて、冷たい手で私たちの足をグイっと掴んでしまうのかもしれません。そんな時でも彼のように走り続けられたらいいなと思います。 | 青空文庫 |
15 | 片岡鉄兵/著 『菜の花月夜』 | 菜の花月夜に、地主の息子が嫁をもらうことになりました。「下り藤」の家紋の花嫁行列を迎え入れるべく村人達が待っていると、果たして見事な行列がやってきました。一行と嫁とり唄を交わし披露宴の準備をしている最中に、村はずれになんとまた別の花嫁行列がやってきます。見れば「下り藤」の家紋。菜の花月夜には狐が人を騙すと言いますが…。 美しい菜の花月夜とのどかな農村の描写、それから狐とくれば、まるで「日本昔ばなし」のような情景を思い浮かべますが、幻想的な物語ではないのです。実は背後に恐ろしい欺瞞の計画があります。ひどい理由で勝手に決められた縁談が、壮大な不幸せを巻き起こしていきます。 | 青空文庫 |
16 | アントン・チェーホフ/著 神西清/訳 『ねむい』 | 冒頭、子守り娘が赤んぼに子守唄を歌っている描写から始まります。穏やかな光景ですよね。心温まる話かと思って最後まで読んでびっくりしました。すごく怖い話でした。 子守娘のワーリカはとにかく眠いのです。眠くて…眠くて、彼女の意識はどんどん解体されていきます。彼女の目に映る光景、思い浮かぶ情景から、どんどん意味が失われていきます。最後に赤んぼはただの記号になってしまい…。人間が人間でなくなっていく、現代の私たちに染みわたる怖さを軽快な文体がつづるから、なおさら怖いのです。 | 青空文庫 |
17 | 伊藤佐千夫/著 『野菊の墓』 | 13歳の少年と15歳の少女の淡く可憐な恋のお話です。べたな展開や二人のやりとりにむずがゆくなってしまうかもしれませんが、そこには目をつぶって読んでください。明治時代の作品なんです。 一緒に過ごすうちに仲良しから恋に変わっていく二人の関係と、それをこころよく思わず引き離そうとする周囲の人々。旧い日本の「家」が二人を遮っていきます。 なかなか二人きりになれなかったり、すれ違ったり。さながら恋愛シュミレーションゲームのよう。細かいことは気にせずに、甘酸っぱさ、切なさを堪能してみてはいかがでしょうか。 | 青空文庫 |
18 | 夏目漱石/著 『野分』 | 明治40年(1907)頃。大学を卒業して、小説を書こうとする親友同士、中野輝一と高柳周作。 金持ちの息子で人の好い中野は、恋に悩む。貧乏で生活に苦しむ高柳は、自意識と周囲の無理解に悩む。そして二人の前に現れるのが、元・中学教師の白井道也。稼ぎが少ないため妻から白い眼で見られつつ、道也は社会を正す志の下、文筆・講演活動に突き進む。 この三人の交流と変化が描かれますが、とにかく悩みまくる高柳君には共感するところ大。また、道也を通じて語られる作者・夏目漱石の社会を見る目の確かさにも驚かされます。 | 青空文庫 |
19 | ニコライ・ゴーゴリ/著 平井肇/訳 『鼻』 | 床屋のイワン・ヤーコレヴィッチが朝食のパンを2つに割ると、中には常連客コワリョーフ氏の鼻が入っていました。一方、朝起きて自分の鼻がなくなっていくことに気がついたコワーリョフは、自分の鼻が礼服を着て馬車から下りてくるのを目撃します。 …何を言っているか分からないと思いますが、私もです。 この荒唐無稽な物語をどう読むか。理解しようとせずナンセンスな話として楽しめば良いのか戸惑いながら読み進めると、作者が出てきて自分も何を書いたかよく分からないというメタ発言をします。とにかく変だけど気になる小説です。 | 青空文庫 |
20 | 谷崎 潤一郎/著 『秘密』 | 退屈に任せて女装し、他人の視線を感じるのを趣味とする男。男はある日、女装して出かけた劇場で昔棄てた女と出会い、自分よりも美しい女に嫉妬しつつ再び恋心を抱いてしまいます。タイトルの秘密って女装のことなんだな、と続きが気になり出した時、第2の秘密が現れます。 この物語で男と女の妖しい魅力を伴った幻想的な関係を支えるのは、「秘密」に他なりません。相手の秘密を知りたいという苦しい欲求には抗い難いですが、知ることと引き替えに失われてしまう物があります。 | 青空文庫 |
21 | 常陸之介寛浩★他サイト読者賞・金賞W受賞/著 『本能寺から始める信長との天下統一』 | 主人公黒坂真琴が、修学旅行で訪れたとある寺の本堂のある地下通路を進むと、その先は本能寺の変の真っただ中でした。本能寺の変で死ぬはずだった織田信長を救った真琴は、妄想力や知恵を買われ、立身出世をしていきます。もしもの織田信長の天下統一の物語を追ってみませんか。 | カクヨム |
22 | 槻影/著 『誰にでもできる影から助ける魔王討伐』 | 召喚された聖勇者、藤堂直継のパーティーメンバーにプリーストとして選ばれたアレス。アレスは藤堂とその仲間たちをレベルアップさせるため、藤堂達本人や同僚たちに振り回されながらも魔王討伐へのサポートを行います。これはビジネスだと割り切り任務に励む、少々不憫なアレスの奮闘記。 | カクヨム |
23 | 芥川竜之介 『竜』 | 恵印法師は鼻が大きいことで奈良の人々に何かと笑いものにされていました。 ある日法師は猿沢の池のほとりに「三月三日この池より竜昇らんずるなり」という立札を立てました。日頃自分を笑いものにする人たちをうまくかついで笑い返してやろうという考えでした。 ところが日が近づくにつれ、竜を見ようという見物人が周辺の国からも何万と集まり始め、法師は面白がるよりも空恐ろしくなってきます。 | 青空文庫 |
24 | 太宰治/著 『ろまん燈籠』 | 読後感のよい、とびきり美しい小説です。 5人の兄弟がバトンタッチしながら一つの小説を創作していく過程と、その小説の内容が展開されていく少し変わった構成になっています。兄弟はみなそれぞれ夢見がちかつ風変り。ですから彼らの描く物語と文体に、5人の個性がもの悲しさや滑稽さを伴って生き生きと反映されていきます。「ろまん灯籠」って言うタイトルがもう素敵ですよね。読み進めてタイトルの意味が分かった瞬間、心の中に灯籠の彩りとやさしい光が広がるはずです。 | 青空文庫 |